(社)日本ヨーガ療法学会

認定ヨーガ療法士

古市 佳也

生きる希望となる
チェルノブイリ被ばく事故被災者支援とヨーガ療法

毎日20分、ヨーガ療法療法継続の
モチベーションは実習者自身が
カラダの変化を実感していたこと。

世界がはじめて経験する原発事故があったチェルノブイリ。キエフ市のビクトル医師の打診によりはじまった被ばく者支援のヨーガ療法指導。最初から放射能被ばくに対するヨーガ療法のエビデンスがあったわけではありません。しかし、日本人は残念ながらも広島、長崎での放射能被ばく経験があり、ヨーガを通じて健康を維持されていると推測できる人たちの経験はキエフへの小さな希望でした。最初の訪問から11回にわたりキエフでのボランティア活動を積極的に支えてきた古市佳也先生へのインタビューをさせていただきました。

ヨーガなんてやりたくない

チェルノブイリ事故から23年経過した2009年1月から、ウクライナのキエフ市内でヨーガ療法ボランティアが始まりました。事前に、現代西洋医学では積極的に健康状態を促進させるすべがないため、事実上放っておかれた状態にあると聞きました。また、直ぐに戻れると聞かされて避難したけれども、二度と戻ることが出来なかったため、住むところも、お金も、仕事も、人間関係も、すべて失って、全くゼロから始めなければならず、しかも、移住先で「チェルノブイリの被災者」ということで差別もされたそうです。また、突然、体の状態がガタガタと崩れて健康状態が悪くなり、仕事を休むと、被ばくなんて関係がない、働けないなら仕事をやめてくれと言われることもあり、経済的にも非常に厳しい状況におかれていました。こうした状況におかれて、健康被害に苦しんでいる方々のために、ヨーガ療法の指導をしてもらえないかという要望からはじまったものでした。
最初、キエフの被ばく者支援団体「ゼムリャキ」で、日本からヨーガ療法の指導のために来ましたと自己紹介した時、「私たちは、ヨーガなんてやりたくない」と言われました。理由は、「ヨーガ=ストレッチ、難しいポーズをやる」という誤解があり、自分たちはそんな難しいことは出来ないということでした。
しかし、木村理事長が、九州大学附属病院の久保千春医師よりアドバイスをいただいたという、「23年経過した今となっては、被ばくによる健康被害は考慮しなくてもよいでしょう。それよりも、その後のストレスによる健康被害に対してヨーガ療法の実技指導を行ってください。」というお言葉を、出発前に教えていただきましたので、皆で運んだプロジェクターや機材を使って、心身相関の疾患についての説明や、ヨーガ療法実習による医学的なデータ、広島、長崎で被爆した方々が、その後、ヨーガを続けることで健康状態を維持されている方々のインタビューの映像をみなさんに見ていただきました。
そうすると、実は、私は血圧が高いんですとか、私は喘息なんですとか、自分は心臓が悪いんですなどと、次から、次へと出てきて、自分たちもヨーガをやってみようかということになりました。

2回目に訪問した2010年5月に、ヨーガ療法の医学効果の有無について検証する準備を行い、3回目に訪問した2010年8月から、亀井勉医師、木村宏輝医師の指導の下で、脳波や血液検査など測定を開始し始めました。はじめてキエフに行った時、わざわざ日本から来てくれたということで大歓迎されました。しかし、2回目に行った時、何かよそよそしく、しらーっとした感じがありました。後で分かったことですが、ヨーガ療法学会や研究者自身の利益や売名行為のために、自分たちをモルモットにしているのではないかと思われたようでした。事故の後、世界中から沢山の研究者が来たけれども、みんな、データを取るだけ取って、その後、なしのつぶてで、自分たちの健康回復のために、誰も何もしてくれなかったそうです。それで、私たちも同じような手合いだと思われたようでした。

しかし、キエフ訪問4、5回目の時くらいから、対応が明らかに変わってきて、とても良くなっていました。最初は、理由が分からなかったのですが、亀井先生から、おそらく、私たち日本人の立ち居振る舞いを、ずっと見られていたのかもしれませんねと言われました。毎回、一軒のお宅に1、2名ずつ分かれてホームステイをさせていただき、夜は、お宅の人たちと写真を見せ合ったり、料理を一緒に作ったり、歌を歌ったりと、毎回、参加される女性陣が良い交流を持ってくれたからかもしれません。それに比べて我々、男たちは、帰ったら、さっさと寝ていましたので、女性陣の頑張りが良かったのではないかと思います。
また、東日本大震災の後、2011年8月の5回目に訪問した時、津波や福島の事故のことはキエフでも大々的に報道をされていました。日本が大変な時にキエフまで来てくれて本当に感謝しますと、ゼムリャキ代表のタマーラさんが涙を流されました。

信用して貰えるまで時間がかかりました。でも、逆に信頼された後は、毎回、帰る前日になると「もう来なくなるの?」と聞かれ、毎回「大丈夫ですよ。また来ますよ」と医師である木村宏樹先生が我々を代表してお答えになるのですが、それでも毎回、帰国する前日に聞かれました。研究調査が終了した2013年3月の8回目の時、もうこれで来なくなるのですかと聞かれたので、木村宏輝先生が、「来るなと言われるまで、来させていただきます」と答えられて、始めて安堵されました。
また、10年以上キエフに住んでいる通訳の竹内さんから事故から25年以上たって、チェルノブイリのことは世界中から忘れ去られていると。事故後23年たったときに支援をしていたのは、僅かに日本とドイツだけでした。竹内さんから、自分たちは忘れ去られていないというメッセージになるので、キエフに来て顔を見せるだけでもいいんですよと言われました。

続けることで、カラダが違いを感じる

第3回目から研究調査が始まり、25名の方が被験者として名乗りを上げてくれました。半年後、継続していたのは17名。医師の亀井勉先生によると、この継続率は驚異的とのこと。普通は30名参加して、半年後に2,3名残ればいいそうです。普通では考えられないほどの人がヨーガを続けたのは、何らかの違いをカラダで感じていたとしか考えられないと亀井先生が仰っていました。データは、毎日、20分間しか実習していないのに、わずか半年で抗酸化力が上昇し、酸化ストレス度が低下するという普通では、考えられない効果が出ていました。

他、聞き取りによる効果ですが、循環器系に良い効果が出ていました。収縮期の血圧が200 mmHgを越えて、頻繁に、救急車で搬送されていた方が、年に1回しか救急車を呼ばなくなったとか、不整脈の薬を沢山服用していた方が、薬の量が半分に減ったなどとい声を聞いています。また、70代の女性で、がんの手術を2回受け、その後、心臓手術を2回受けてから、夜、仰向けになって寝られなくなり、いつも枕を3つ、4つ、積み重ねて、そこに寄りかかって寝ていた方が、毎日、20分間のヨーガ療法実習をしていくうちに、ある時から、仰向けになって寝られるようになったという話も聞きました。

2013年9月より、現地の人が現地の人にヨーガ療法を教えることができるようにヨーガ療法士の養成講座もスタートしました。やはり日本とウクライナとではバックグランドや生活習慣が違うため、生活の中でのストレスや問題は現地の方同士の方が共感しやすい。現在、12名の方が受講を修了しました。ヨーガ療法では、クライアントの不調を見立ててその人にあうヨーガ療法指導を行いますが、キエフからは早くも、このような不調の場合は、どのように指導したらよいのかという質問が積極的にたくさん出ていますので、今年はクライアントのアセスメントが出来るような養成講座を開催する予定になっています。

半年間、毎日20分
続けることで活性酸素が減少する

キエフでのヨーガ療法指導を11回続けてわかったことは、繰り返し実習することの積み重ねによって、想像以上の効果が得られるということでした。また、太り過ぎてポーズの形が上手く出来ない人が、勝手に自分でポーズの形を変えて、ただ、胸に手を当てて「あ~」と声を出している方もいました。どころが、その方も、他の人と同じ効果が出ていました。ですから、ポーズの形や、柔軟性が効果を出すのではなく、継続の積み重ねが重要なポイントになると現場で分からせていただきました

[編集後記]

被ばく事故の影響は、直接の健康被害はもちろん、将来への不安や差別によるストレスなどから次々と心身の不調が続いていく中、ヨーガ療法が何かお役に立てるのではという想いで進んでいったプロジェクト。道なき場所に道をつくるような全くの手探りの状態からのスタートでした。古市先生は、「何事もやってみないとわからないよね。」そして、「ボランティアは人への奉仕を通して、実は自分への大きな恵みでした。」と。被害者に生きる希望の星となったヨーガ療法。これからの活動もこうご期待!ヨーガ二ケタンで行われているヨーガ療法士、ヨーガ教師養成講座に参加されている方はこれらのボランティアにも参加いただけます。

Information

古市 佳也(ふるいち よしなり)

ヨーガスタジオ・チャンドラ主宰、(社)日本ヨーガ療法学会 認定ヨーガ療法士
認定ヨーガ療法士会兵庫 幹事長、(社)日本統合医療学会 認定療法士(ヨーガ)、(社)日本統合医療学会 代議員
(社)エビデンスに基づく統合医療研究会 評議員、(社)日本心身医学会会員、(社)日本アーユルヴェーダ学会 評議員

ヨーガスタジオ チャンドラ/http://www.studio-chandra.jp/
チャンドラ・スクール・オブ・ヨーガ/http://www.chandra.jp/

定価900円(税込)

キエフでのボランティア活動やヨーガ療法の医学的検証についてのさらに詳しい情報は

「チェルノブイリ被ばく事故被災者支援とヨーガ療法」

をご覧ください。

《購入方法》
下記フォームより「チェルノブイリ被ばく事故被災者支援とヨーガ療法」希望と
お問合せをお願いします。
http://yogatherapy.jp/contact.html